IT社員の公私混同2

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【感想】おかえりモネ

連続テレビ小説 おかえりモネ Part1 NHKドラマ・ガイド

最高だ。震災と震災に出会った人々にどこまでも誠実に向き合う良作だった。エンタメ性は薄いかもしれない。それを差し引いても名作だった。

※ネタバレありです。

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その誠実さは、りょうちん親子の描き方をみればわかる。時間がたって普通に生活していても、大切な人を失った人の悲しみが突如として襲うこと、少し前向きに生きていたと思ったら、また振り出しに戻ってしまうこと、あの日の悲しみが簡単に癒されないこと、そして、あの日のあった生活の基盤を戻そうとしても、簡単には戻らないことが丁寧に描かれていた。

りょうちんは、順調に漁師の道を究めている様に見えて、突如、母親を失った悲しみに襲われるし、りょうちんの親父は、アルコールを絶っていても、りょうちんの成長を目の当たりにして、妻がいないことに絶望して、飲酒してしまう。
りょうちんの親父が、モネの親父の力を借りて、船を取り戻そうしても、過去の借金が災いしてご破算になってしまう。
妻の死を受け入れることも、簡単にできない。本当に問題がなかなか解決しない様が描かれている。

エンタメ性を重視するなら、多少なりとも改善する様子を時折話さむのが常道だと思うが、そういったことをしない。

本作には、エンタメに走るのではなく、震災にあった人たちのリアルを描こうという意志が感じられる。あの日あった大変な時を思えば、あの日を生きた人たちの問題が簡単に解決するはずがないのは明らかだ。

そういった震災にあった人たちが割り切れない思いを抱えて生きる人たちを丁寧に描いた上で、そういった思いを抱えたままでいいんだという、この上ないやさしいメッセージを本作を届けている。

みーちゃんのトラウマを知ったモネの対応が象徴的である。モネはおばあちゃんを見捨てたことを悔いる度に、モネは「みーちゃんは悪くないと言い続ける」と伝えた。あの日のツライ思いごと包み込むモネの優しさに私は震えてしまった。

また、私たちとっても、その優しは非常に意味がある様に思う。私たちは、災害にはいつ遭遇しておかしくないと感じている。その様な「優しい言葉」は、これから訪れるかもしれない恐怖の中で見いだせる希望となり得るのではないだろうか。

震災に対してこの様にしっかり向き合ったことは、朝ドラとしても大きな意義を持つように思う。2010年代、震災をどう描くかという問題は、2010年代以降の朝ドラで大きな課題だった様に思う。それをやっとなしたという意味でも画期的な朝ドラであると言える。

名作でした。制作陣、お疲れ様でした。