非常によかった。
最近みた邦画でもトップクラスによかった。
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登場人物たちが抱える問題が、思春期あるあるで、共感しやすかった。それゆえ、それらが解決されることに大きなカタルシスを感じられることが、本作の大きな魅力だ。
アルプススタンドの端にいる皆は、挫折を経験しており、その結果、虚無感・ニヒリズムに支配されている。「仕方ない」という言葉で努力すること、挑戦することをあきらめてしまっている。10代というのは、プライドが高く、繊細ゆえに、そういうニヒリズムで自分を合理化しがちで、多くの人に共感できる問題であるように思う。
そして、そのニヒリズムに支配される彼らを覚醒させるのが、優等生の報われない恋心というのも、青春って感じがしてよい。おじさんは郷愁にとらわれまくってしまう。その優等生と演劇部+元野球部のパーティーが対立し、その対立を野球の応援を通して、一つになりニヒリズムを乗り越えるという展開はムネアツ以外の何ものでもない。
また、劇中のセリフ一つ一つが非常にリアルだった。
あの女子高生の野球に対する理解のなさや、ルールに対する適当な解釈など、「あー、こういうこと言う人いたわー」と昔を思い出させるものだった。
あと優等生が成績で負けたことに対する「ほかの人の成績なんて気にしてなかった」という負け惜しみはマジで10代のそれだった。さすが、高校演劇の脚本をもとにつくられただけのことはある。
細かい点だが、小道具である飲み物の使い方も見事であった。それぞれの登場人物が持っている飲み物がパーソナリティーを表現するのに役立っていた。
微妙な飲み物「黒豆茶」を買ってくる演劇部員は、ズレている天然っぽさを象徴しているし、吹奏楽部の部長が持つアクエリアスは、熱中症対策をしっかりできるしっかりものだということがわかる。
物語で解決される問題とそしてその問題が解決される過程はもちろん、些細な小道具、心理描写といった細かな点まで、どれをとっても素晴らしい傑作だ。
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