さすがアカデミー賞事象作品、最高だった。
何がいいかというと、「貧乏はクソ、経済格差は害悪」ということを徹底的につきつけてくれる点である。
※ネタバレありです。
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経済格差は、どんなに家族に恵まれているような人間であっても、殺人に駆り立ててしまう程に人間を追い詰めるということを、本作は実感させてくれる。
家族の大黒柱は、作中で語られるように、分別をわきまえていて、寄生している家族に特段恨みを持っていたわけではなく、むしろ感謝さえ感じていた。ところが、娘の負傷をきっかけに殺人へと突き動かされる。
本作では、そこにいたる心の機微が非常にわかりやすく明確に描かれていたのが非常によかった。
水害でつぶれた家と豪邸での誕生日パーティーのコントラストだったり、風呂にはいれなかっために金持ち一家に臭いと思われていることにイライラしたりという、不満がどんどんと積みあがっていくのがはっきりとわかる。
そして、その不満が爆発するきっかけ(=娘の命が金持ちの子供の命よりも軽く扱われたこと)も非常に説得力がある。
同じ命のはずなのに、娘よりも子供の命が大事にされている。すべては金がないからだ。同じように金があれば、娘もすぐに病院に運べたはずなのに……。
だから、あの殺人が必然的に思わる。同じ様に貧困を題材に扱ったジョーカーと比べると、殺人にいたるまでの過程がリアルだ。今の世の中なら、ああいったことが容易に起こりえることが想像できる。
ジョーカーは、あまりにも不運が続く(母親のDV,仕事のリストラ、コメディアンとして挫折e.t.c.)ため、本作ほどは「金がない」ことの問題点が実感しづらい。家族に恵まれていれば、あの凶行は回避できたのではないかと考えてしまう。
※ただ、ジョーカーはアメコミが題材なので、リアリティーという点で分が悪いのは致し方ない
また、そういった重いテーマを扱っているにも関わらず、前半はコミカルだったのもよかった。コミカルな方が、どんどん作品に入っていけるし、後半の展開のインパクトが大きくなり、より貧困の苦しさが実感できる。
前半の家族楽しく生きている姿が、後半の絶望的な展開をひきたている。
とても満足できた作品であった。
※ジョーカーの感想もあります。
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