※ネタバレありです。
〈スポンサードリンク〉
新海誠作品の良さは、登場人物の切実な願いがあるにも関わらずそれがなかなか叶わないこという切なさを描いている点にあると思う。
「秒速5センチメートル」では、大好きだった同級生に会いたいという切実な思いがあるけれど、物理的な距離が障害となって願いが叶わない。
「言の葉の庭」では、大人になって学校をともにサボっていた教師を救ってやりたいというと思うけども、子どもだから、教師をいじめた同級生を殴るくらいのことしかできない。時間(年齢差)が障害となり、願いが叶わない。
「君の名は。」では、体が入れ替わった思い人に会いたいという願いがあるけれど、時間の断絶とこの世にいないという大きな障害があった。ただ、「君の名は」はこれまでと違うのは、切実な願いが実ることにある。
そして、今作も、息苦し日常から逃げ出したい、大人に支配されずに行きたい、そして「思い人に会いたい」という切実な願いが描かれて、それが叶うところは前作と同じだった。
だが、本作はこれまでと違って、その願いが叶ってもなお、本作は切ない! ここが新しい! しびれた!!
なぜなら、願いを叶えるための障害が時間や空間といった物理法則ではなく、「他の誰かの切実な願い」がだったからだ。彼らの願いが叶うということは、誰かの「晴れてほしい!」という思いを犠牲にしているからだ。彼らがともにいるということは、少女が、天気の巫女という役割を放棄することに他ならない。
物語中盤では、「晴れること」がどれだけ人々に勇気を与えるかを丁寧に描れていることを踏まえれば、少年と少女は一種の負い目の様なものを追うことになるのは明らかだ。
「願いが叶うこと」がどういうことには、誰かの願いを犠牲にすることもあるという事実を、サラッと扱ってしまう新海誠、マジで恐ろしい。
「君の名は。」の様にみんな救われ、少年少女の願いも叶って万々歳な終わり方を望んでいる人をサクッと裏切っている。
スポンサーもたくさんついて、国民的なアニメ監督になっているにも関わらず、万人受けを狙うことなく、自分の伝えたいことを怯まずにぶち込んでくる度胸はホントに凄い。そこに痺れる憧れる!
また、相変わらずアートワークが素晴らしかった。陰々鬱々と降る雨とそれが晴れていくシーンなんかは、美しくて、人々に喜びが伝わってくる。こういうアートワークがしっかりしているから、「晴れてほしい」という誰かの願いが少女にプレッシャーを感じることもすんなりと理解できる。
絵がきれいってことは素晴らしいんだなという当たり前のことを実感した。
RADWIMPSの音楽の使い方も効果的だった。主人公がモノローグを語るシーンは、ひとつ間違えば退屈なシーンにるのだが、彼らの曲が流れることで単調さが回避された
「君の名は。」の滝や三葉が登場したり、「言の葉の庭」で声優を務めた花澤香菜がカメオ出演したりと、これまで彼の作品を追いかけていた人に対してファンサービスをしているのもよい。彼の作品を見続けたご褒美を彼からもらった気分になれた。
よかった!もう一度みたい。
〈スポンサードリンク〉