IT社員の公私混同2

ゲーム開発者が、映画、ドラマ、アニメと言った趣味について書くブログです。

【感想】梨泰院クラス ※ネタバレあり

70点くらいの出来だった。
同じ韓国ドラマでネットフリックスの愛の不時着に比べるとだいぶあれだった。

sonykichi.hatenadiary.jp

※ネタバレありです

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主人公の復讐という基本的なドラマの軸がしっかり提示されていたので、全体がきっちりまとまっていた。主人公の青春時代に、一生をかけてでも、復讐をしたいという思いを丁寧に描写していたので、その後の彼のモチベーションがはっきりわかるのがよかった。
加えて、「曲がったことが大嫌い」「商売は人と人のつながり大事」というポリシーを披露する場面も繰り返し描かれており、彼のパーソナリティーがちゃんと理解できた。
それ故に、彼が「何があっても復讐を果たす」という強い意志を持ちながらも、「(復讐にとってマイナスになろうとも)自分の仲間を守る」という時には相反する思いがあることが極めて自然に思える。

話のテンポを乱すことなく、フラッシュバックや回想を巧みに使い、個々人の心理描写をしっかりしていたのもよかった。

梨泰院クラスの面々のみならず、長家の会長とドラ息子たちが何を思って
が、なぜここにきて、なぜここで働き、そして何に悩み、何を望でいるかがはっきりわかる
個人的には、トランスジェンダーのマ・ヒョニの回想があった後で、彼女が意を決して料理コンテストに挑む場面は激アツだった。

 

ただ、本作は突っ込みどころが多々あった。
(たくさん褒めたからもういいでしょう……)
半沢直樹と似ていると言われている本作だが、半沢と比べてしまうとどうしてもアラが目立つ。

まず、カタルシスを感じるポイント少なく、ストレスがたまる一方だった。

半沢は復讐のゴールに対して、マイルストーンの様なものがあって、それが達成されることでカタルシスを感じることができた。例えば、今作で言えば、帝国航空再建の過程では、「社内を一つにまとめる」、「情報をリークする裏切り者を見つける」といった大目的を達成するための小目的が1話毎で達成された

ただ、本作はそれがなかなかない。長家に対して、打撃を与えことも少ないし、話が進んでも、長家をぶっ潰す過程を歩んでいるという実感が薄い。株主総会での解任動議を否決されてからはそれが加速する。
主人公たちは、そこからは、長家からの攻撃に対して防戦一方になり、やがて、終盤は主人公の会社の拡大とイソとスアとの三角関係にフォーカスされる。しかも、後述するが、スアの魅力不足のせいで三角関係も盛り上がらない。終盤は話の軸がぶれている様に見えざるを負えない

 

ビジネスものとしても、ちょっとスケールが小さくて……フィクションの中くらい、2000兆円とはいわずとも、100億、1000億くらいの金が動いてほしい。100億ウォン出資を集めて話題になっていたが、日本円だと10億なので、スケールがあれ……。

 

そして、本作で、一番、一番、腹が立つのは、幼馴染ヒロインことスアである。幼馴染史上、最も応援する甲斐がない。顔面がきれいだからと言って、調子にに乗りすぎ!!

主人公と同じ様な立場にありながら、終盤まで宿敵長家に従順でい続けるのはいったいどうゆう了見なのか! 父親代わりの男を殺したやつらの元でただただ普通に働いているのはどういう神経なのか……。劇中でその点についての葛藤が描かれていれば、別に問題ないがそういう描写がほぼない。
※主人公の会社に対する攻撃に対して心を痛める描写はあるにはある

かといって、楽しく仕事するわけでもなく、自分は何もしないのに主人公に「早く私を助けにきてよ」と言ってキレ散らかすありさまである。ピーチ姫じゃないんだから、少しは主体的に動いてほしいものである。
あまりの主体性の無さは、劇中でも、長家会長から語られるほどである。

 

恋愛でもその主体性の無さはかわらないのがマジで腹立つ。ライバルのイソに対して「セロイは私をずっと好きだと言ってくれている」と謎の余裕をかまし、セロイのために何かしてやることはない。幼馴染にあぐらをかきすぎ! 人生舐めプが過ぎる。結果、三角関係も盛り上がらない。イソの逆転勝利は一ミリも疑う余地がなく見ごたえがない。

 

劇中、一気に数年経過するが、主体性の無さその後もまったくかわらない。「まるで成長してない」と某バスケマンガのコーチの様な心情になってしまう。

最後の最後で、長家の不正に関してリークするというファインプレーをようやく発動するが、そこに至るまでに減点がポイントが多すぎて全く好きになれなかった。

 

この主体性の無さは、制作陣も理解していた様で作中、長家会長は彼女の言動を「奴隷の様で軽蔑する」と述べている。
制作陣、それに気づいているなら、せめて、彼女がどういう思いで長家で働いていたかを示す心情描写する場面をもっと増やすべきだった。そもそも制作陣は、このスアという人物を真面目に描く姿勢がまったくみえない。制作陣のスアに対する愛の無さには怒りを覚えるほどだ。

 

というわけで、そんなに悪くはないが、ヒロインの扱いがひどすぎて減点多め。

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