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【感想 】ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形 - ※ネタバレあり

ヴァイオレット・エヴァーガーデンのいつもの魅力と新たな魅力にふれることができた作品であった。

 
※ネタバレありです

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本シリーズのTV版の魅力とは、「愛している」を知るために真っ直ぐに生きるヴァイオレットとの交流を通じて、依頼人たちが自らの「愛している」という思いを、手紙にしていく過程にある。この作業を通じて、依頼人たちは、蓋をしていた自分の気持ちに自覚的になり前を向く力を得る。
視聴者にも、秘めた他者への思いを抱えている者は少なくないから、その姿が多くの人の共感を呼ぶのだろう。

 

本作もその様な過程が描かれている。寄宿学校で、義理の妹への気持ちを抑え込み、苦しんでいる依頼人が、ヴァイオレットとの交流を通じて、縁を切った義理への妹への思いを言葉にし、そして手紙にしたためている。
ただ、今回はそれだけではなく、その手紙を届けた後に手紙の出し手と受け取りてがどうなったかを2時間という映画の尺でしっかりと描いていた。思いを手紙にする素晴らしさだけでなく、思いが届く素晴らしさ、そして、その手紙を受け取った人間の人生にどれほど影響を与えるかが描かれていた。姉に会いたいと願う妹の姿をみて、後半も、がっつり泣けた。

 

また、今作は次回作に続く要素がうまく映画に落とし込めていた様に思う。次回作の予告を見るに、テクノロジーの発達により、手紙の価値が下がってしまった時代の話のようだ。本作は、テイラーの視点から、そういった時代でも通用する手紙の価値を説いている。手紙=幸せを運ぶものということが彼女の経験から語られる。

 

そして、今作もやはり、京アニの作画が凄かった。特にライティングがすごい。ランプの灯りによるキャラのライティングが神がかっている。もはや、自然光も影になる様や陽が当たる様が実写レベルだった。


ヴァイオレット・エヴァーガーデンは、手紙を書くという作業を通じて、人間の素晴らしさを描く作品だと私は思っているが、京アニの作画はこれに大きく役立っている。
本シリーズを観ている間は、美しい作画が物語と相まって、人間が、この世界が美しいものであると感じることができる。

だが、今作は、これまでと同じように美しさを感じることができなかった。


そんな美しい世界をつくっていた、クリエイター達に悲劇が起きてしまったからだ。
例の事件により、この作品をみて感動できる反面、美しい世界をつくる人たちが、一人のくだらない思いの犠牲になってしまったということを思わずにはいられない。どうして、こんな悲劇が起こってしまうのか、悔しくて悔しくてたまらなくなってしまう。やるせない気持ちで悲しい。


あの事件は、尊い命を奪っただけでなく、彼らの残した作品が与えるはずだった美しいものを汚したのである。これは許されることではない。

 

だが、次作をみるときは心から感動できるはずだ。卑劣な犯罪被害にあってもなお、美しい世界を描けることを彼らが示してくるるからだ。私は京アニを信じて、次回作をいつまでも待ち続けたい。

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