これは、、、厳しい。世間的に評価がいまいちなのは、仕方がない。
ただ、細田守の作品の中では、割と好きな話だった。
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細田の作品は、いつも田舎と家族の礼賛に終始しており、そこがとてつもなく好きではない。
「おおかみこどもの雨と雪」では、それが頂点に達していた。都会は子供を育てられないので、田舎に引っ越すし、雪が社会にコミットできない問題は、父親から受け継いだ能力である狼変身能力よって解決される。田舎のめんどくささを知る人間としては、空々しくなってしまうし、個人の努力によって問題が解決されないのは、まったく好みではない。
細田作品は、この様な田舎と家族を礼賛する描写が散見され、彼の描くストーリーにまったく入っていけない。
だが本作は違った。田舎を礼賛することはなく重い、加えて、主人公のスズは自らの決断で葛藤を乗り越える。スズは母親が自分以外の子供のために命を懸けた過去に苦しみ、ありのままの姿で自分らしくふるまえないという問題を抱えている。そして、自ら赤の他人の子供を救いたいと願い、自らの姿を晒すという現代社会ではリスクしかない決断をする。そういった行動を経て、過去の母親の行いを理解し、過去を乗り越える。同級生たちや合唱同好会のおばさま方も手助けはするが、サポートにすぎない。
とはいえ、彼女が決断に至るまでのプロセスが非常にわかりづらい様に思う。竜にどういうモチベーションで近づいたかや、彼にどういう感情を感じているのかが、ピンとこない。美女と野獣をオマージュした描写が大ことから、恋愛感情から近づいたと思えるが、同級生が好きであることから、恋という感じでもない。ライブを邪魔されたことによる怒りの様なものも感じない。おそらく、設定上は、スズが竜に惹かれた理由があるはずだが、そこが描ききれていない。個人的には、これがはっきりしないので、途中の話が入ってこなかった。
ライブ上の演出や同級生たちとの人間関係みたいな話は、それぞれ興味深かったが、それらが、スズが竜にひかれていくことをまったく説明していない。むしろスズが、幼馴染との恋愛に揺れる様を描くので、よりわかりづらさがました。
Uの世界の描き方だったり、楽曲の持つ説得力だったりは、本当に素晴らしいが、話がわかりづらいという、物語としては割と問題ありありだと言わざるをえない。
あと、DV親父の声優が石黒賢だったのが、本当に嫌だった。ゲスト声優をそこに使ってしまったら、ぜったいに何かがあるとわかってしまう。変なネタバレになってしまう。日本の広告代理店はいい加減にしてほしい。